『乳液は基礎化粧品の一つで「エマルジョン」「ミルクローション」「ミルキィローション」「モイスチャーミルク」他、 化粧品メーカーにより呼称が異なりますが、「角質の油分(脂分)を補うため」に使われることには変わりはありません。』 と前号で御説明申し上げました。
さて、その「角質に油分(脂分)を補うため」のスキンケア製品が、 クレンジング料という「化粧料を落とす」に特化した製品群と同等のことができるのかということです。
そもそもの「乳液を使ったクレンジング」の発想は、特別新しくも無く 舞台メイクアップでは緊急時に使われていました。
現在は、以前程「塗り固める」ほどのメイクアップはなされませんが、 かっては遠目で映える肌づくりとして高濃度の顔料(肌色の元)と肌への粘着性(密着度) の極めて高い油脂でつくられた専用のファンデーションでメイクアップをなされていました。
そして「油は油で落とす」という原則から、クレンジングオイル登場以前では、 「いかにも油の固まり」という代物のクレンジングクリームでそのメイクアップを落としていました。
ところがその1回のメイクアップを落とすために、 1瓶まではいかなくともそれ相当の量を必要とされたのです。
そこで、足りなくなった時に乳液をクレンジングクリームの代用として使われたのです。
そもそもこの当時のクレンジングクリームは、 固い油と柔らかい(ゆるい)油のブレンドです。
この、固い油が少なくなれば、必然的に現在のクレンジングオイル(柔らかいオイルと界面活性剤のブレンド) に近くなります。しかし、クリームが好まれたのは、 クレンジングオイルのように「垂れない=衣装を汚さない」からでした。
それでも独特の感触に馴染めない方は、ベビーオイル(100%ミネラルオイル)でクレンジング。
また「使用期限が越えた」と判断した乳液は、 リップブラシのクレンザーとして使っていました。
少し脱線しましたが、「油(油脂成分を含有するファンデーションや皮脂)は 油(植物・動物・化学)で落とす」ということは、現在も通用することです。
「油は油で落とす」という原則に従うと、 乳液には相当の油分がありますから、クレンジングは可能です。
しかし、乳液は『化粧水とクリームの中間のスキンケア製品』であることから、 化粧水的な保湿成分や水分も多く含まれています。
それらのことからクレンジングオイル他の一部のクレンジング料より、 「感触がいい」のは確かです。
また、クレンジング後拭き取った後の感触も、しっとりしているでしょう。
しかし、これは乳液の本来の役割で「角質に油分(脂分)を与える」にほかなりません。
「乳液でクレンジングができる、感触がいい」という実益や官能は、 新しい発見かもしれません。
また、乳液は持っているけど使うことが少ないという方には朗報かもしれません。
しかし、それをクレンジング料として使い、不純な油分(フェンデーションのオイルや皮脂) と乳液をお肌の上で混ぜることに抵抗を感じるのは僕だけでしょうか。
また、この拭き残してししまった乳液がお肌に残っている上に 、化粧水をつけてもファンデーションのオイルや皮脂が 混ざり込んだ油膜で保湿効果が期待できません。
結局は、ダブル洗顔(クレンジング+洗顔料)が必要となるでしょう。
特にスキントラブルがあるお肌に対しては、あまり好ましくは思いません。 ささやかなことでも、スキントラブルを誘発させたり進行させるのは好ましくないからです。
補足: オイル成分が主なクレンジング類の中、クレンジングミルクという 感触面でも向上された専用製品があります。
【文章】お化粧コンサルタント
メイクアップアーティスト 渡会治仁 |