化粧品メーカーや企画会社は新製品を開発したり、 製品を市場に出すまでどのようなことをしているのでしょうか。
大手の化粧品メーカーでは原則的に、これらは公開されないのが通例のようです。
それは、そのプロセスが雑多であることや、多くのハードルを通過して新製品が 市場に流通されるからです。そのため、プロセスのトピックスをダイジェストで お知らせせざるをえないのです。
開発される化粧品は、コンセプト(販売ターゲット・価格・効果他、市場調査が基本)があり、 それに基づき試作品をつくります。
そして、この試作品が叩き台となり、さらに完成に近づけるべく努力します。
その中でも重要なのが、この試作品を試用してくださるテスター(パネラー)さんです。
化粧品は、研究所のビーカーのまま市場にでるわけではありませんし、 使われて初めて"コスメティック"となります。
そこでテスターさんのご意見を元に、 「根本的に処方を変える」「微妙に変更を加える」ということになります。
おおよそ90%以上は仕上がっている化粧品を、さらに完成にもっていくには、 測定器よりも女性のフィーリングとご意見が必要となるのです。
ここで、テスターさんより得られた情報(試用評価)を どのように判断するのかが担当者の腕の見せ所です。
試用評価を得るには、アンケートを使ったり口頭での聞き取りがありますが、 いずれも一長一短があり、どちらを重視するのかでも可否が変わってしまいます。
アンケートの場合は、設問の中より選択という方法ですので、微妙な評価がわかりません。
また、「良い」結果になりやすい傾向にあります。 口頭での聞き取りの場合は、使用感を言葉にするという難しさがあり、 質問方法が適切でないと結果を誘導してしまいます。
あるところで見た光景ですが、先生が「私は、この化粧品使ったら痒くなった」 と発言したところ、そのスタッフが全員「私も痒くなりました」との意見が占めました。
つまり、その先生のご意見に皆さん同調してしまったのです。
同様に、あらかじめパネラーに「有名な方が使っている」「推薦している」 と伝えただけでも、良い評価に導かれてしまいます。
しかし、それでは評価の正当性に疑問を持たざるをえません。
いわばメーカーよりの好評価への誘導となります。
また、安易に「よい評価を導きだし、それを宣伝に使う」というのも 否定はできませんが、作為的な誘導は詐称に値します。
そこで、主観も先入観も入らないように容器は普通のプラスティック製で、 使用用途だけをお知らせし、後に試用感想を聞くブラインドテストを行います。
そして、その結果を解析し「根本的に処方を変える」「微妙に変更を加える」のいずれかを選択します。
このように、新製品(化粧品、香粧品)は"人が使う製品"であることから 安全性・法規の厳守他あらゆることをクリアーし、はじめて世にだされます。
そして、そのプロセスには企画・製造・販売会社だけではなく、 年令問わず一般の女性(男性の場合もあります)のご意見・ご感想が介入しています。
このことにより、とかくオフィスや研究所では見落としやすい、 「気がつかなかったこと」や「求められていることが」明確になります。
そして、それを教えてくれるのが、いつも女性なのです。
新製品や製品を市場に出せるのは、多くの「女性のおかげ」といっても過言ではありません。
【文章】お化粧コンサルタント
メイクアップアーティスト 渡会治仁 |